日本海学とは

研究分野の解説

1.環日本海自然環境

 ア)環日本海の環境変遷と予測

日本海の誕生から現在までに発生した環境変動の歴史をさまざまな手法を用いて解析し、また、変動の周期性から地球規模の気候サイクルのリズム、海流の変化、海水準の昇降、生物の消長などを解明し、近未来の変動予測を行う。大気と海の相互作用、特に対馬暖流の消長に伴う気候変化とその影響に関する研究、環日本海地域の植生と気候温暖化の影響調査、海水準の昇降に伴う地形変化の予測とそれに伴う生態系の変化等の研究。

分野:地球と日本海の歴史 海と循環 人と環境 気象変動・環境変化 生物史

2.環日本海交流

 ア)交流を生んだ要因

環日本海地域の交流を支えた日本海。石器時代から始まった、海を越えた人や物の交流を生み出した要因を、環日本海の自然環境(気象、海流、海進、地質、植生等)や経済・文化等の面から解明する。

分野:  魚介 植物

 イ)交流の形態

日本海を媒介とした交流を相互的な視点で捉えるとともに、南シナ海~東シナ海~日本海~オホーツク海という世界的規模の観点で環日本海交流を見つめる。その視点から、縄文~弥生~古代~中世~近世~近・現代に繰り広げられた特色ある交流や物流の姿を明らかにする。日本人の渡来、稲の伝播、ヒスイロード、古代朝廷国家と日本海、出土物からみる日韓の海を介した交流、シルクロードと日本海、潟湖と古墳にみる海の交流、渤海交流、陶磁器の道、北方交易、北前船による交易、日本海の近現代の交流や貿易等の解明。

分野:人の移動と文明 国際交易 国際交渉 海運 物資の移動

3.環日本海文化

 ア)環日本海民族の文化

環日本海地域の諸民族が環日本海の自然環境や交流の影響を受けながら創り出し、受け継いできた環日本海生活文化の多様性や特色を明らかにする。海環境に適応する物作り文化の究明。広大な日本海をはさんで共有されてきた装飾品、服飾品、工芸品、美術品や海をつなぐ船や港に関する研究。

分野:文化 健康 深層水資源 言語文学 舞踊 音楽 工芸美術 食と料理 遊び  技術 雪国 風景 

 イ)海の思想、信仰

環日本海地域で生まれ、日本海をはさんで共有された住みわけ、循環、適応、畏怖、共存、分かち合い、平和、環境思想等の現代につながる思想(知恵)、信仰や祭りの発生、伝播等の特質を明らかにする。

分野:地中海 信仰

4.環日本海の危機と共生

 ア)日本海環境をめぐる危機

環境ホルモンや海洋汚染物質の化学的研究と生態系への影響。産業廃棄物や二酸化炭素増加量の現状調査。異常気象の発生メカニズムの解明。日本海側で発生する海底地震のメカニズム解明。地震災害(津波等)の研究。現在の日本海およびその周辺域における地殻変動量の測定。酸性雪と酸性雨の影響と対策。絶滅危惧種状況調査。大気汚染の植生等に与える影響調査。
 

 イ)日本海との共生

重油分解菌や重油回収船等の汚染除去技術の研究。浸食防止技術や水質改善などの海洋保全に関する研究。大気汚染除去技術の開発。潮力・波力・海洋温度差発電等の海洋エネルギーに開する研究。海洋環境と水産資源保全の研究。深層水の成分分析と有効利用の可能性調査・研究。日本海の海底資源開発。海洋レクリエーションの創造とマリンフロント開発に関する研究。
 

 ウ)海をはさんだ共生

海をはさんだ地域の共生のために、必要な環境保全と国際的活動を究明、民俗学の成果や、地中海、バルト海等の閉鎖海域(地域海)の取組を調査。海洋資源、水辺環境保護等の具体的な国際協力活動等のプロジェクト調査と新世紀のプロジェクトを提示。
環日本海地域諸国の政治経済安定化につながる沿岸地域の開発・貿易・投資等のための多角的な経済交流の分析と提言。環境汚染、廃棄物投棄等のマイナス経済の発生を抑制・解決するための経済・技術施策の究明。安定した交流を生み出すための有効な協定、外交策の研究。