海の祭り
日本海沿岸の地域では、海の信仰と深いかかわりのある祭りも数多く伝えられています。
東北地方の夏の夜をいろどる「ねぶた祭り」もその代表的なひとつです。祭りでは、人物絵や歌舞伎(かぶき)の場面をえがき、なかから灯(ひ)で照らした巨大な細工物を車にのせて、町中をひき回します。そして、祭りの最終日には、細工物を川や海に流すのが、もともとの祭りの形でした。
また、富山県の滑川(なめりかわ)市では、夏の夕刻、紙や野菜で作ったヒトガタ(人形)を4mあまりの大きさのたいまつにかざりつけ、これに火をつけて海に流し、無病息災(むびょうそくさい)を願う「ネブタ流し」の行事が今もつづいています。
これらの祭りには、お盆にお迎えしたご先祖様の霊(れい)を、川や海に流してお送りする「精霊(しょうろう)流し」の行事と同じような意味があります。海の向こうには聖地(せいち)があり、この世の“つみ”や“けがれ”を清めてくれるのだと、海を知るわたしたちのご先祖は信じてきたのです。