富山湾の七不思議
その3・蜃気楼
富山湾では、対岸の建物や海上の船が、長くのびて見えたり、逆さまに見えたりする不思議な現象が起こります。これは、温度差(=密度差)のある空気層中で、光の屈折(くっせつ:折れ曲がること)が起こると見られる現象で、蜃気楼(しんきろう)といいます。
蜃気楼には2種類あります。上が暖かく下が冷たい空気層のときに現れる「春のしんきろう」、海面の温度より気温が低くなると現れる「冬のしんきろう」です。
冬のしんきろうは、視界さえよければ毎日のように現れ、富山湾に限らず全国各地の海岸で見ることができます。これに対して、春のしんきろうは、平年で4〜5月に10〜15回程度しか現れず、毎年ほぼ確実に見られる場所は、全国でも富山県魚津(うおづ)市のほか数カ所に限られています。
海岸から見たしんきろう(富山県魚津市)
その4・埋没林と海底林
埋没林(まいぼつりん)とは、その名の通り“埋(う)もれた林”のことです。発見されたものは、約2000〜1500年前、片貝(かたかい)川の氾濫(はんらん)で流れ出た土砂が、
下流にあった林を生育場所とともに埋め、その後、海面が上昇したために、海底の地下に長い間ねむっていたと考えられています。
1930(昭和5)年、魚津漁港の改築工事のとき、海底の地中から約200株もの木の根が発見されました。ほとんどが杉の巨木で、もっとも大きいものは直径2m以上、樹れい500年以上とみられるものでした。
木の株だけでなく、種子や花粉、昆虫などの化石、縄文(じょうもん)時代の土器のはへんなども発見され、これらは太古の地球の様子や環境の変化をさぐる重要な手がかりとなります。
大きな水そうに保存された埋没林(魚津埋没林博物館)
1980(昭和55)年、入善(にゅうぜん)町吉原沖の水深20〜40mの海底に、木が何本も立っているのを地元のダイバーたちが発見しました。海底から生えたままの立木のすがたで、高さ30〜50cm足らずのところで折れた状態でした。
この海底林の年代は約1万年前で、日本海で発見されたものでは最古のものです。注目すべきことは、それらの木が根をはった立ち木の状態で残っていたことで、少なくとも8千年〜1万年前の氷河時代には、そこが陸上に広がる森林であったことを意味します。
発見された木の種類は、ハンノキ、ヤナギ、ヤマグワ、カエデなどで、日本海側地域の海岸から低山帯に現在も見られるものばかりです。